間違いだらけの税務調査 注意点や対策・対応方法

税務調査の注意点 (監修:山根治公認会計士・税理士

 国税局や税務署による税務調査や査察から財産と信用を自衛するための注意点や対策等を、山根治公認会計士・税理士が解説。 *関連リンク
[質問] 税務調査を受けた際の、対策や対応、注意点について教えて下さい。 (2009-12-22)
1. 税務調査の立会人に関する注意点や対応方法
 まず信頼できる人に立会ってもらうことです。必ずしも税理士である必要はありません。
 国税局や税務署は何故か税理士以外の立会人を認めようとしないようですが、税務調査の立会いは税理士の独占業務ではありませんし、税務当局が税理士以外の立会人を排除する合理的な理由は見当りません。
 ちなみに、判例(東京地裁、昭和38(ワ)10917号)でもそのことは確認されています。不当な税務調査を防ぎ、納税者の権利を守るためにも、しっかりと国税局や税務署に物申すことのできる立会人が必要です。(ただし、税理士法第二条1項により、税理士以外が代理人として税務に関して主張することは認められません
2. 事前通知のない税務調査に関する対策や対応方法
 予告のない突然の税務調査は断ることができます。任意調査である以上当然のことであり、特別の理由など必要ではありません。予告なしの抜き打ち調査が常態化し、ともすれば強権的になりがちな、国税局資料調査課(リョウチョウ)による調査も、任意調査であることに変りありませんので、同様です。いったん帰ってもらいましょう。納税者と立会人の都合に合わせて、改めて調査日程を決めればいいでしょう。
3. 帳簿書類等を調査される場合の対応方法や注意点
 税務調査は申告した納税額についてのものですから、帳簿書類等を無制限に調べることはできません。
  1.  進行年度の帳簿書類とか証憑類は見せる必要がありませんし、税務調査時点での現金などの調査(現況調査)は断ることができます。
  2.  税額計算に直接的な関係のない契約書等の重要書類や、機密文書など見せる必要はありません。法律によって守秘義務が課せられている医師、弁護士、公認会計士などの、患者とか顧客の個人情報については単に見せる必要がないだけではなく、見せてはいけないものです。ちなみに、税理士も税理士法の建前としては守秘義務が課せられている(税理士法38条、59条)のですが、一方、国税局や税務署に対しては顧客の相談内容などは洗いざらい開示することが義務付けられています(税理士法41条、55条)ので、こと税務当局に対しては守秘義務がないに等しいのです。大切な相談内容が国税局や税務署に筒抜けということです。
【参考】 質問検査権の行使は無制限に認められるか。(近畿青年税理士連盟 兵庫県支部)
4. 帳簿書類等を勝手に捜索されそうになった場合の注意点や対応方法
 税務調査は任意調査ですので、納税者の了解なしで、勝手に事務所とか工場の中に入ったり、あるいは机の引き出しとか金庫を開けたりすることは許されていませんし、納税者の了解なしで、勝手に従業員に質問したりすることも許されていません。帳簿書類等の捜索は違法です。断りましょう。
 断ったにもかかわらず、帳簿書類等の捜索を強行された場合、納税者支援調整官制度や請願法を活用して、国税局や税務署に対して抗議することが可能です。
【参考】 納税者の許可なく、机の引出しや金庫等を調べることができるか。(近畿青年税理士連盟 兵庫県支部)
【参考】 納税者支援調整官|国税庁の機構|国税庁概要・採用|国税庁(国税庁)
【参考】 請願法(総務省:電子政府利用支援センター)
5. 反面調査に関する注意点や対応方法
 取引相手の税務調査に関連した調査(反面調査)に対しては、無条件に対応する必要はありません。最近、反面調査が当然のように濫用される傾向にありますので、まず、相手先に確認して了解を得てから対応するようにしましょう。
6. 署名捺印を求められた場合の注意点や対策・対応
 国税局や税務署の調査官が勝手に文書を作成して納税者に確認の署名と印鑑を求めることがあります。このような文書に署名したり捺印したりするのは納税者の義務ではありませんので、原則として断りましょう。やむを得ず署名捺印するときは、立会人によく相談した上でしましょう。調査官の機嫌を損じてはいけない、とか、あるいは、早く調査が終るなら、などと安易に考え、事実と異なる内容の文書に署名したりしますと、文書が一人歩きを始め、場合によったら取り返しのつかないことになるおそれがあります。
 国税局資料調査課(リョウチョウ)による税務調査(任意調査)において、質問顛末書(国税局査察部による査察において作成される供述調書)に似た文書を作成し、署名捺印を強要するケースがあるようですが、前述の通り、納税者の義務ではありません。信頼できる立会人と相談した上で、署名捺印をするか否かを判断しましょう。やむをえず署名捺印した場合にはコピーを残しておきましょう。
【参考】 ハニックス工業事件の真相(株式会社M&Aバンク)
7. 税務調査の受忍義務に関する対策や対応方法
 税務調査がズルズルと長引いて、相当の期間を経過してもなお終了しないときには、調査理由の開示を求めましょう。これまで何を調査したのか、未調査のものには何があるのか、具体的に詳しく問い質すことです。その上で、税務調査を継続する合理的な理由が示されないときには, 税務調査の中止を申し入れることです。納税者の受忍義務は無制限ではありません。
 また、納税者支援調整官制度や請願法を活用して、税務当局に対して抗議することも検討しましょう。
【参考】 納税者支援調整官|国税庁の機構|国税庁概要・採用|国税庁(国税庁)
【参考】 請願法(総務省:法令データ提供システム)
8. 調査事実の証拠保全に関する注意点や対策・対応方法
 税務調査の始めから終りまで記録しておきましょう。誰が来て、どのような質問をし、どのような税務調査をしたのか克明にメモをしておくことです。国税局や税務署の調査官の名刺は必ず受け取り、大切に保存しておきましょう。同時に、身分証明書・質問検査証の提示を求め、名前・登録No.等必要なことがらを記録しておきます。
 税務調査の状況を記録するには「税務調査ノート」が最適です。この「税務調査ノート」は、「被疑者ノート」(日本弁護士連合会)を参考に作成したもので、税務調査の状況を克明に記録することにより不当な税務調査を抑止する効果が期待できます。
 また、国税局や税務署はイヤがるようですが、録音、録画しておくといいでしょう。録音するなら税務調査をしないとか言って席を蹴って帰ることがありますが、気にすることはありません。不必要なトラブルを避けたいのであれば、隠しマイクでも使えばいいでしょう。
 公務の執行を、主人公である国民が記録するのに何のはばかりもありません。不当な税務調査を抑止するのに大きな効果を発揮します。最近の査察(マルサ)事案に関して、査察官の質問状況が全て録音されていたために、査察官が作成して法廷に証拠として提出された質問顛末書が、捏造されたものであることが明らかになったケースがあります。
9. 修正申告を求められた場合の注意点や対策・対応
 税務調査が終わりますと、修正申告をするように勧められます。修正申告の慫慂(しょうよう)と言われているものです。納税者が修正申告に応じてくれることは、国税局や税務署としたら手間がかからずにそのまま調査官の実績となりますので、なんとか修正申告をさせようとします。
 指摘事項が十分に納得できるものであれば、修正申告に応じてもいいでしょうが、早く税務調査を終えたい、とか、調査官の機嫌を損じたらいけない、などと考えて安易に応じてはいけません。ひとたび修正申告したが最後、例えば国税局や税務署に騙されて修正をしたことが後になって判明した場合でも、異議申立てや審査請求をすることができなくなり、納税者を救済する道が完全に閉ざされてしまうのです。
 それだけではありません。不正認定処分が一定額以上の場合には、担当調査官の意向とは関係なく、査察部門に回付され、刑事事件に発展することがあります。6.の「文書が一人歩きを始める」ことと同様のことが起きかねません。気をつけましょう。
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税務調査の注意点: 目次

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